
不妊は女性だけの問題だと考えている方も多いかと思いますが、不妊症の48%は男性側にも原因があります。
この記事では、男性不妊の基礎知識から検査、日常生活で気をつけるポイントなどについて解説します。
「男性不妊」の基礎知識と原因

日本では、妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合を、「不妊症」といいます。
不妊の原因は年齢や疾患などさまざまですが、世界保健機関(WHO)の調査によると、不妊カップルのうち約24%が男性のみに原因があり、約24%が男女双方に原因があるとされています。つまり、不妊の原因の約半分が男性に関連しているということです。
妊娠は決して女性だけの問題ではありません。パートナーと寄り添いながら、二人で向き合うことが大切です。
男性不妊の主な原因
造精機能障害
精子を造る能力に問題があり、精子の数が少なかったり、精子の運動率が低くなったりしている状態です。原因が不明であることが多いですが、精索静脈瘤(精巣の周りにできた血管のコブ)という病気が原因であることもあります。造精機能障害は、男性不妊の中でも最も多く、全体の約8割を占める主な原因とされています。
精子の通過障害
精子の通り道である精管が途中で詰まってしまうことで、射精しても精子が出てこないことがあります。過去の炎症(精巣上体炎)などが原因です。
性交の障害
勃起することができない勃起障害や、女性の腟の中で射精でき ない射精障害などがあります。妊娠への精神的なプレッシャーをはじめ、ストレスが原因と考えられています。また、糖尿病などの病気が隠れていることもあります。
加齢の影響
男性も年齢を重ねると、精子の数や運動率が徐々に低下し、精子のDNAの損傷率も高くなるといわれています。35歳を過ぎると精子の質が徐々に低下すると報告されています。また、流産や赤ちゃんの先天的な問題のリスクも高くなります。
男性不妊につながる要因
生活習慣の乱れ
次のような生活習慣の乱れは、精子の質を低下させることが知られています。
- 喫煙:精子のDNAを傷つけるため、禁煙が推奨されます
- 過度な飲酒:ホルモンのバランスが崩れ、精子の形成を妨げることがあります
- 肥満:ホルモン環境が変わり、精巣の働きが低下する要因となります
- 睡眠不足・運動不足:精子の質を悪化させる要因となります
日頃から生活習慣を整えましょう。
ストレス
ストレスが続くと、男性ホルモン(テストステロン)の分泌が低下し、精子の数や運動率の低下につながります。さらに、性欲や精機能にも影響するため、勃起することができない勃起障害や、女性の腟の中で射精できない射精障害など、性生活そのものに支障が出る可能性があります。ストレスに対する適切な対処が大切です。
精巣温度の上昇
精子は高温に弱く、精子を造る場所である精巣が長時間高温にさらされると、精子形成に影響を及ぼします。妊活を考え る時期になったら、次のような行動は、精巣の温度を上げてしまうため注意が必要です。
- 長時間のサウナや熱いお風呂への入浴
- 締め付けの強い下着の日常的な使用
- 膝の上でノートパソコンを使用
- 長時間のデスクワークや運転
など
精索静脈瘤などの病気
男性不妊の原因は不明であることが一番多いですが、原因が判明しているものの中で最も多いのが「精索静脈瘤」です。
「精索静脈瘤」は、精巣のまわりにある血管が拡張し、血流が悪くなることで、精巣の温度が上がり、精子の質が低下する病気です。自覚症状が少ないので、不妊検査で初めて見つかることも少なくありません。
また、クラミジアなどの性感染症やホルモン異常、遺伝的な病気も男性不妊の原因となることがあります。
過去の病気や手術歴
幼少期に「停留精巣」だった人や、「精巣捻転」、「鼠径ヘルニア」の手術を受けた方は、将来的に精子の数や機能に問題を抱える可能性があります。また、抗がん剤治療や放射線治療を受けた経験がある人も、精巣の機能が低下する場合があります。
男性不妊の検査
男性不妊かどうかを調べる最も基本的な検査は、精液検査です。
精液検査は、男性にとって心理的なハードルが高い検査ですが、男性不妊かどうかを判断するとても重要な検査です。
精液検査
精液はマスターベーションで採取します。自宅で採取して医療機関に持参する方法と、医療機関内で採取する方法があります。
精液検査では、主に 精液量、精子濃度、精子(総)運動率などを測定します。精液検査を受ける際は、禁欲期間は2~7日を保つようにしましょう。なお、精液の状態は体調や禁欲期間などにより変動するため、1か月以上間隔をあけて少なくとも2回検査を行い、総合的に判断することが推奨されています。

精液検査で異常がみられた場合には、泌尿器科でのさらに詳しい検査が必要となります。
問診
既往歴(精巣についての病歴や手術歴、性感染症など)に加え、喫煙・飲酒・ストレスといった生活習慣、使用中の薬を確認します。
また、性行為の頻度やタイミング、勃起・射精の状態も重要な情報です。
身体診察
精巣の大きさ・硬さ・左右差を評価します。
超音波(エコー)検査
精巣の大きさや、内部の構造(腫瘍や精巣の萎縮など)を確認します。
ホルモン検査
血液検査を行い、精子を造る機能に関わるホルモン(テストステロンなど)の値を調べます。
その他、染色体検査や遺伝子検査を実施する場合もあります。
最後に
不妊症の原因の約半分は男性側にもあり、「男性不妊」は決して珍しいことではありません。 妊活をはじめてもなかなか妊娠しない場合は、パートナーと一緒に医療機関へ早期に受診し、検査をして男性不妊かどうかをチェックすることが必要です。
妊娠は、女性だけではなく男性も主体的に関わるべきライフイベントです。 パートナーと二人で話し合い、支え合いながら進めていくことが大切です。
また、「病院へ行くのはハードルがある」、「自分は病院に行った方がよいか迷う」方などは、自治体の相談窓口を利用することもできます。
保健師や助産師などが、相談を受け付けています。お近くの相談窓口にご相談ください。
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