
将来の妊娠について不安を抱える人は少なくありません。
日本では、妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交していたにもかかわらず、1年間妊娠しない場合を、「不妊症」といいます。
不妊の検査・治療の経験がある夫婦は22.7%で約4.4組に1組と言われ、「不妊かもしれない」と悩んだことのある夫婦の割合も年々増えており、決して珍しいことではありません。
不妊に関する正しい情報を知っておくことは、将来のライフプランを考えるうえで大切です。
この記事では、不妊について解説します。
不妊の原因

不妊の原因は、女性だけでなく男性にも存在します。不妊に悩むカップルの半数近くは、男性にも原因があると言われています。
女性側の主な原因

卵子が成熟すると、卵巣から卵子が排卵します。排卵した卵子は、卵管の中で精子と出会い受精します。受精した卵子と精子(受精卵)は、子宮に向かって移動し、子宮の内膜に着床できれば妊娠します。不妊はこのどこかの過程がうまくいっていない状態です。女性側の原因には以下のようなものがあります。
排卵障害
生理が規則的な場合、生理開始日から約2週間後に排卵すると言われています。生理が不順な場合、たとえ生理のような出血があっても、排卵しないことがあります。排卵が起きなければ、妊娠は成立しません。
排卵がうまく起こらない原因には次のようなものがあります。
- 肥満や極端なやせ
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovary syndrome)
- 甲状腺の機能異常
- 乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)の分泌異常
- 心身のストレス
など
卵管通過障害
卵管が詰まっている、あるいは通りにくくなっていると、卵子と精子が出会えず妊娠できません。
卵管が詰まる原因としては、クラミジア感染後の炎症による癒着や、子宮内膜症による癒着があります。
子宮の入口(子宮頸管)の異常
子宮の入口である子宮頸管は、排卵が近づくと粘稠(ねんちゅう)なおりものが増加し、精子が通りやすい環境になります。子宮頸部の手術や感染による炎症によって、この粘稠なおりものがうまく分泌されないと、精子がうまく子宮の入口を通過できなくなります。
子宮の形態異常
子宮の形態異常があると、受精卵の着床が難しくなります。子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、先天的な子宮の形態異常がある場合、受精卵が着床しにくくなることがあります。
加齢の影響
卵子は年齢とともに数と質が低下します。30歳を過ぎると妊娠する力が低下し始め、35歳を過ぎるとその低下が加速します。
男性側の主な原因
男性側の不妊の原因については以下のようなものがあります。
造精機能障害
精子を造る能力に問題があり、精子の数が少なかったり、精子の運動性が低くなったりしている状態です。原因が不明であることが多いですが、精索静脈瘤(精巣の周りにできた血管のコブ)という病気が原因であることもあります。
精子の通過障害
精子の通り道である精管が途中で詰まってしまうことで、射精しても精子が出てこないことがあります。過去の炎症(精巣上体炎)などが原因です。
性交の障害
勃起することができない勃起障害や、女性の腟の中で射精できない射精障害などがあります。妊娠への精神的なプレッシャーをはじめ、ストレスが原因と考えられています。また、糖尿病などの病気が隠れていることもあります。
加齢の影響
男性も年齢とともに妊娠する力が低下します。35歳を過ぎると精子の質が徐々に低下すると言われています。
詳しくは「男性不妊」の記事 を確認してください。
不妊の検査と受診の流れ
妊活をしているにも関わらず、なかなか妊娠しない場合、早期に医療機関を受診して、妊娠しない原因を調べることが大切です。
女性に行われる主な検査
内診・超音波検査
産婦人科の診察台(内診台)の上で診察を行います。内診台では、子宮や卵巣の大きさに異常がないか、痛みがないかを触って診察します。また腟から超音波検査(エコー)を行い、子宮筋腫や卵巣嚢腫などの異常がないかを確認します。
子宮卵管造影検査
X線で透視しながら子宮内に造影剤を注入して、子宮の形の異常や癒着、卵管の詰まりや腫れがないかを確認する検査です。
血液検査
血液検査では、排卵や月経に関わるホルモンの値を調べるほか、卵巣の中に残っている卵子の数の目安(卵巣予備能)を知るための検査として、抗ミュラー管ホルモン(AMH)の測定を行います。AMH検査は、不妊治療の方法や今後の治療計画を考える際の参考となる検査です。
必要に応じて、子宮の内側をカメラで直接観察する子宮鏡検査やMRI検査などを追加する場合もあります。
男性に行われる主な検査
精液検査
男性不妊症かどうかを調べる最も基本的な検査は、精液検査です。精液を採取し、精液の量、精子濃度、精子運動量、精子の形態などを確認します。精液検査は、男性にとって心理的なハードルが高い検査ですが、男性不妊症かどうかを判断するとても重要な検査です。
精液検査で異常がみられた場合には、泌尿器科でのさらに詳しい検査が必要となります。
不妊治療の主な方法
不妊治療には次のような治療法があります。

治療を一定期間行っても妊娠に至らない場合には、状況に応じて次の治療法へ段階的にステップアップをしていきます。
女性の年齢や検査結果によっては、より早い段階でステップアップを検討することもあります。いずれの場合も、医師と十分に相談しながら治療法を選択していきます。
保険適用の範囲・条件
不妊治療の保険適用は以下のようになっています。体外受精や顕微授精などの生殖補助医療には保険適用の条件が定められています。治療を受ける際には、事前に条件を確認しましょう。

医療機関の探し方
こども家庭庁の以下のホームページでは、不妊治療を実施している医療機関を、都道府県、治療内容、その他の条件を選択し、検索することができますのでご覧ください。
最後に
不妊に関する知識を持つことは、将来のライフプランを考えるうえで大切です。
不妊は特別なことではなく、誰にでも起こる可能性があります。
早いうちから情報を知っておくことは、将来の選択肢を広げることにつながります。
「病院へ行くのはハードルが高い」「受診すべきか迷っている」方などは、自治体の相談窓口を利用することもできます。
保健師や助産師などの専門職が、不妊について相談を受け付けています。お近くの相談窓口にご相談ください。
(新しいタブで開きます)また、こども家庭庁「不妊・不育ポータルサイト(ISSHO)」では、みなさんが不妊について知り学べるきっかけになるように、妊娠や不妊に関する正しい知識や選択肢などの情報を、色々なコンテンツで紹介していますので是非ご覧ください。