プレコンを“みんなの問題”として広げるために! 「プレコンシンポジウム 2026」開催レポート

2026年3月8日、東京・イイノホールで、こども家庭庁主催の「プレコンシンポジウム 2026 #いまを進めよう」が開催されました。会場でのリアルイベントとオンライン配信を組み合わせたハイブリッド形式で、多くの参加者がプレコン(プレコンセプションケア)について考える一日となりました。
シンポジウムでは、「プレコン応援団」のタレントたちが授業形式でプレコンに関する知識を学ぶ企画のほか、自治体・企業・教育機関の実務者によるパネルディスカッションが行われ、プレコンを社会に広げるための方策が多角的に議論されました。
プレコン応援団の登場に会場が沸いた~オープニング
2026年3月8日に東京・イイノホールで開催された「プレコンシンポジウム 2026 #いまを進めよう」。当日は、来場した参加者とオンラインで視聴する参加者を結んで実施されました。
オープニングでは、お笑いコンビ・ぺこぱの松陰寺太勇さん、シュウペイさん、インフルエンサーのゆうこす(菅本裕子)さん&ミュージシャンのたなかさん夫妻、俳優の岡田香菜さんらによる「プレコン応援団」が壇上に登場。進行は、アナウンサーの安東弘樹さんが務め、軽妙なトークで会場を盛り上げました。

こども家庭庁の取り組み
プレコンセプションケア推進5か年計画と「プレコンサポーター」について

冒頭に、こども家庭庁 成育局 母子保健課課長の田中彰子さんが登壇し、国が進める「プレコンセプションケア」普及のための取組について説明しました。
「プレコンセプションケア」とは、「性別を問わず、適切な時期に性や健康に関する正しい知識を持ち、妊娠・出産を含めたライフデザイン(将来設計)や将来の健康を考えて健康管理を行っていく、という考え方のこと。こども家庭庁が大学生50人を対象に調査をしたところ、プレコンセプションケア(以下、プレコン)について「聞いたことがある」人はなんと0人。また、不妊リスクが何歳ぐらいから高まるかを正しく知らない人が男女ともに多いことがわかりました。「性や妊娠に関して学ぶ機会が不足している、という課題があります」と田中さん。
働く若手社員たちからも、「将来こどもが欲しいけれど上司に伝えると重要な仕事を任せてもらえないのでは」、「不妊治療で通院したいが同僚に迷惑がかかりそうで悩む」という声が。不妊治療を経験したことのある人で、働いていた人の3割は「仕事か不妊治療のどちらかをあきらめていた」という調査結果も紹介されました。
「プレコンセプションケアは、若い人、妊娠を考えている人だけのものでなく、支える周囲の人たちも知っておくべき知識です」と田中さんは訴えます。
このような課題を解決するべく、国は2025年5月に「プレコンセプションケア推進5か年計画」を策定。性や健康に関する正しい知識の普及と情報提供、相談支援の充実などに取り組んでいます。

1月にはeラーニングによる「プレコンサポーター養成講座」を開始。これまでに、誰でも受講可能な基礎編は約2,400人、専門職向けのアドバンスト編は約1,300人の修了者がいるといいます(2026年2月末時点)。3月より、男性にも関心を持ってもらうことを目的に、「メンズプレコン検定」のサイトも公開しました。
「2030年までにプレコンサポーター5万人以上の養成を目指します。例えば、自治体では市民講座の開催、企業では産業保健や人事担当の方が制度を活用しやすい機運づくり、教育機関では専門職による個別の相談など、それぞれのお立場でプレコンセプションケアを広めていただくことを期待しています」と、今後の展望を示して締めくくりました。
模擬授業形式で学ぶプレコン
知って選ばないことと、知らなくて選べなかったは大きく違う

続いてのステージは、プレコンの医学的なエビデンス情報をより分かりやすく伝えるために、授業スタイルで展開。講師を務めた北海道大学大学院 医学研究院 社会医学分野 公衆衛生学教室 准教授の前田 恵理さんは、最初にプレコンを考える際のキーワードとして、「女性:ダイエット志向、男性:精子力」を提示しました。生徒役のプレコン応援団(ぺこぱ、ゆうこす&たなか、岡田香菜)のみなさんも熱心に耳を傾けます。

まずは女性の「ダイエット志向」についての解説です。日本人の20代女性では「やせ」の人が20%台で高止まりしており、これは世界的に見ても好ましくない状態であること。やせや低栄養では、糖尿病予備群の割合が高くなる、貧血や月経異常などの不調があらわれやすくなるといった当人の健康問題のほか、妊娠前にやせの状態であると低出生体重児となるリスクも高くなること、さらに胎児期の低栄養によって、生まれてきたこどもの心血管疾患や糖尿病リスクが高くなる可能性があることについて説明がありました。
ゆうこすさんが「最近はパリコレでもモデルさんのやせすぎが禁じられるなど、世界的に問題意識が高まっているようですね」と言うと、前田さんも「やせていることが良いという思い込みや誤ったダイエット情報があふれている現状を、社会全体で変えていきたいですね」と頷きました。妊娠前の少なくとも1カ月以上前から葉酸を摂取することで、先天異常である神経管閉鎖障害の発症リスクが70%低減する、ということが紹介されると、応援団のみなさんは驚きの表情に。
続いてテーマは「精子力」へ。今は、世界的に精子濃度や総精子数が減少しているというデータが示されました。前田さんは、「喫煙や飲酒、生活習慣病などにより体内に炎症が起こり、精子が作られにくくなる、あるいは精子に傷がつくのではと考えられています」と解説。前田さんの研究では、身体活動量が多いほど、また、座位時間が短いほど、 精子の傷つき方が少なかったとのこと。ぺこぱの松陰寺さんが「座るのが怖くなってきました!」と思わず起立するシーンに、会場は笑いに包まれます。

岡田さんは「先生、私も周りの友だちも、まだ結婚やこどもを持つことについて具体的には考えていないのですが、今のうちから人生設計を決めて準備しておいたほうがいいということでしょうか?」と質問。これに対して前田さんは、「プレコンは決断を迫るものではありません。ただ、知っておいてほしいのは、日本では30代でこどもを産むことが一般的になっている一方で約4.4組に1組の夫婦が不妊の検査や治療を受けていること、そして年齢が高くなるほど赤ちゃんが生まれる確率が下がってきてしまい、流産率が上がるという医学的事実です」と答えます。

前田さんは、「こどもを持つ・持たないということは人生の大切な選択で、その選択はどんなものであっても大切にされるべき。その上で、年齢のこと、不妊治療のことなどを正しく理解しておくことが重要なのですね」と納得感を伝えました。
ぺこぱのシュウペイさんの「とはいえ、10代、20代でこういう話をするのってハードルが高いかなと思いますがどうですか?」という質問に対し、前田さんは、「知っていて選ばないということと、知らなくて選べなかったということは大きく違います。誰もが十分な情報を得て、選択すること、それを社会がサポートすることがとても大切です」と回答。この言葉に、応援団のみなさんも深くうなずいていました。
思い込みを外し、「知ること」から始める
パネルディスカッション 未来の“あたりまえ”をつくるのは誰?
パネリスト
- 自治体:京都府 健康福祉部 こども・子育て総合支援室 参事 河本 倫子さん
- 企業:浅野製版所 事業開発部 部長/産業カウンセラー 新佐 絵吏さん
- 教育機関:神山まるごと高専 教学マネジメント室長 齋藤 亮次さん
- モデレーター:北海道大学大学院 准教授 前田 恵理さん

第二部のパネルディスカッションでは、プレコンを社会に根付かせるためには何が欠けていて、何が必要なのかを議論しました。最初に、プレコンに取り組む自治体、企業、教育機関の取り組み事例が紹介されました。
教育機関の神山まるごと高専(徳島県)では、「どうすれば10代が当事者意識を持ちプレコンについて考えることができるか」について学生たちが考える授業を実施、学生たちは、アプリやすごろくなどを作成してプレゼンしました。会場では授業の様子を記録した短編動画も上映。授業を体験した学生たちからは「将来の選択を自由にできる状態は、正しい知識や準備によってつくられる、という価値観を持つようになった」、「この瞬間だけ男性になれたらと思う場面もあった」といったリアルな声も挙がりました。授業を企画・実施した齋藤亮次さんは「未来は自分の手で実現していく、創っていくものである、ということを私自身、授業の中で大切にしています」と話しました。

中小企業におけるプレコンの取り組みを紹介したのは、浅野製版所の新佐絵吏さん。15年前、男性社員と同じ働き方を女性社員に求めていた結果、長時間労働による体調不良を理由に、ほぼ全員が30歳を前に退職していた、というエピソードを紹介し、「それ以降は、両立支援や健康経営、女性の活躍推進など、ありとあらゆる取り組みを行ってきました」と新佐さん。PMSや更年期といった女性の健康課題であっても年齢・性別問わず全社員を対象に「健康研修」で学び合っていること。また、全社員が「プレコンサポーター養成講座」を受講したことも紹介されました。女性社員は定期ミーティングを行い、そこから経血のもれを気にせず座れる「経血座布団」というものづくりも。こうした取り組みを通じて高まった健康への意識は、社員本人だけでなく、その周囲や家族にも広がっているとのことです。

自治体からは、京都府 健康福祉部の河本倫子さんが登壇。京都府では、不妊治療を始める年齢が遅いこと、10代女性の人工妊娠中絶が一定数起こっている、という2つの課題をもとに、教育啓発活動を行う集団アプローチ、悩みをかかえる人の相談を行う個別アプローチという2軸でプレコンに取り組んでいます。
集団アプローチでは、「幼児期、小学生・中学生、高校生、大学生、社会人と、年齢層ごとにアプローチを変えた取組を行っています」と河本さん。高校の授業で活用してもらうため、授業用のスライドと医師による補足動画の教材を、全国で初めて開発したことも紹介しました。
個別アプローチでは、2025年から「きょうと妊娠から子育てSNS相談」、「きょうと妊娠SOS」の相談窓口を設置。SNSやオンラインの活用で個人が困りごとを相談しやすい環境を作り、必要な支援へとつなげています。

後半のディスカッションでは、「プレコンと向き合ったときに感じた壁、困難は?」というお題が示されました。
神山まるごと高専の齋藤さんは「“そうぞう”ですね。10代という、まだ切実性がない段階の学生にプレコンをどのように届けるか、誤解なく伝えるにはどうすればいいか、と考えました。学生がどういったことに関心があるのか想像力を働かせるとともに、いろんな考えがある中でプレコンという概念を届けるための創造をする必要もある、と考えました」と答えました。
続いて、浅野製版所の新佐さんは「“自分”です。最初のハードルは自分の偏見だったということです。当初、プレコンというのは妊娠、出産で休んでもらう前提で社員に学んでもらうもの、という勘違いをしていて、そんなテーマは会社では扱えないと思っていました。しかし、自分の体調を整えて未来を選択するもの、という内容を知り、これまで過重労働で妊娠や出産を両立できずに仕事を辞めざるをえなかった社員たちのためにも真剣に向き合うべきテーマであるとあらためて感じましたね」と率直に話しました。
京都府の河本さんは、「“未知”です。SNS相談に10代、20代の若い方から相談が入ってきたとき、驚くほど性や妊娠のことを知らない実態がありました。ただ、振り返ると私たち親世代も学校や親から詳しく教えてもらったことがないのです。本人たちだけでなく親・教師も含めて、わからないか ら目をそらす、触れない、ということでは不安感が大きくなるばかり。未知のものへの不安がプレコン推進の壁になっていると感じます」と話しました。
議論のなかでは「プレコンの教育が進んでも、受け入れる側の企業側が全く知らないとギャップが起こってしまうので、自治体には学校と企業をつなぐ役割も期待している」という話題も。自治体、企業、教育機関という異なる立場でも、若者の将来の健康や幸せを実現したい、という思いは同じ。目をそらさず、どうすればうまく情報を届けられるか、正しい行動につなげることができるかを、それぞれの立場から話し合い、合意形成して連携することで、プレコンはさらに広がっていきそうです。
「話しにくい」を越えて小さな話題からはじめてみる
トークセッション 参加者と考える「はじめの一歩」

第三部では、ステージにあらためてプレコン応援団のみなさんが登場しました。 20代代表として岡田さんは「プレコンは健康や人生設計を考える上で大切なこと。自分で調べるだけではたどり着けないような情報も、今日は知ることができました。性に関することは避けてしまう部分もあるのですが、自分の体や心、そして大切な人を守るためにも10代の頃から触れる機会がさらにあるといい」と感想を語りました。
1歳のお子さんがいる、ゆうこすさんとたなかさんご夫妻。たなかさんは、「プレコンっていう名前は知らなかったけど、知らずにやっていたな、と思いました。自分自身は男子校出身で女性のことが分からず、特に妊娠、出産となるといっそう分からないので、妊活するにあたっては、けっこう率先して学んだところがあります」と話すと、ゆうこすさんも、「私たち、プレコンデートしていました。産婦人科への通院もいっしょに行って、その前後にいっしょにご飯食べるんです。“検査デート”って呼んでいました」と笑います。

ぺこぱのシュウペイさんは、「中高生など、もっと早い段階から学ぶことができたらより女性の体や健康の理解が広まるはず。男性の精子力について、生活習慣の話などドキッとするところがありましたので、気を付けないとなって思いました」と話しました。
セッションの間に実施されたライブアンケートでは、会場・オンライン視聴者の声を集めました。「今の気持ちを聞かせて」との質問には、「自分の立場で考える必要があると感じた」「もっと知りたいと思った」が同率33%で最も多い、という結果に。シンポジウムの内容は参加した方々の心にも届いたようです。

女性の「やせ」と出産後の胎児への影響については、このトークセッションでも話題になりました。 ゆうこすさんは「アイドルをしていた10代の頃、BMIは18.5以下でした。今は健康が大事って思いながら日々筋トレしています」。たなかさんも「本当の美しさはバランス。筋肉があると美しいし、無理にやせようとすると心もすさむので良くないです!」と話しました。
ぺこぱのシュウペイさんは「知らないことによってつらい思いをしたり、自分の周りの人が悲しむ姿は見たくないので、自分たちが知ったことを伝えていくべきだと思いました」と話すと、松陰寺さんも「こういう話って、気をつかってしまったり、話しにくいっていう先入観があるけれど、そういう前提を取っ払っていきたいなと思います」と発言しました。
ここで再びライブアンケートがありました。「あなたは周囲の人と健康や将来の人生設計について話すことはありますか、もしくはありましたか?」という質問を投げかけたところ、最も多かったのは「ときどきある(あった)」で42%、次に多かったのは「あまりない」で28%でした。
たなかさんが「こどもをどうしよう、という話題から入ると身構えるところがあるかもしれませんが、葉酸のサプリメントなど小さな話題から始めて、スモールステップでいくのもいいんじゃないかな」というと、ゆうこすさんも、「確かに、妊娠・出産にかか わらず、健康について気軽に話せたほうがいい。私、夫と付き合い始めたとき、仕事のしすぎでボロボロだったので、睡眠時間を増やそう、とか健康について助言してもらえて、すごく助けられました。私はプレコンを通して、よりいっそう夫と仲良くなれたなと思っています」と笑顔に。

クロージングでは、北海道大学の前田さん、こども家庭庁の田中さんも、再び壇上に登場。前田さんは、「ゆうこすさんとたなかさんのように、二人揃って健康になられているのはとてもいい実例ですね。社会全体でプレコンを加速させていきたい」と話しました。こども家庭庁の田中さんも、「プレコン応援団のみなさんや会場のみなさんのご意見を直接聞くことができ、とても多くのヒントをいただきました」と締めくくりました。

2時間以上にわたって、いろいろな立場の人と議論を交わしたシンポジウム。健康について見つめ直し、プレコンを取り巻く環境づくりについて思いを馳せる充実の内容となりました。
会場ロビーには賛同企業のブース展開も
プレコンを支える多様な取り組み
会場ロビーでは、本シンポジウムの趣旨に賛同する企業・団体が特設ブースを開設したほか、イベントの幕間には各社・各団体からの応援メッセージも上映されました。来場者は、プレコンの啓発や社会実装を目指して既に開発されたサービスや製品について、興味深そうに触ったり、説明を聞いたりしていました。 展示をした8つの企業・団体は以下の通りです。
株式会社ファミワン/公益社団法人日本助産師会/株式会社カネカ/順天堂大学 SIPマイウェルボディ協議会/大塚製薬株式会社/株式会社Smart Nurse/住友生命保険相互会社/株式会社Vital Spark(社名アルファベット順)。


シンポジウム・イベントの新着情報

2026年3月8日(日) 14:00-16:20

2025年11月27日(木) 09:00-12:15